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コラム家づくり時評

強度偽装事件と建築家

1昨年から昨年にかけての強度偽装事件に続き、またもや強度偽装事件が持ち上がりました。

大きな括りで言えば同業界に属するものとして、大変恥ずかしく、また憤りも覚えます。

個人住宅についても、お客様から強度偽装に関してのご質問がよく寄せられますので、業界事情を踏まえ、弊社ザ・ハウスの見解を以下に述べさせていただきます。

建築家に設計を依頼する場合、デザインや機能性以前の問題として、やはり強度ということが大切になります。

ただし、強度を考える上でもっとも大切な変数である建物の重量は、ビルやホテルなどと比較して戸建住宅は大変軽く、特にたいていのビルやホテルが重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造であるのに対して、戸建住宅の8割は木造ですので、重量は1/10〜1/100程度でしかありません。

また、ほとんどのビルやホテルは商業地などの容積率が高い地域に建てますが、住宅は容積率の低い住宅地に建てることが多く、結果として、ビルやホテルは縦長のものが多く、一方住宅は真四角を中心に少し横長だったり、縦長だったりというような形になります。

積み木を積み上げれば、形によってもゆれに対する強度がずいぶん違うことをご想像いただけるかと思います。

このようなことを考えますと、同条件の土地に建てた場合、小さく軽く縦長でない戸建住宅の方が、地震などに対して比較的有利であると言えます。

しかしながら、構造物である以上、外力による破壊・倒壊の危険がまったくないということはありません。

建築家に住宅の設計を依頼する場合は、まず初めに地盤の強度を調査します。
そこでもし地盤に不安がある場合は、建物の重量を想定したうえで、地質改良や杭、基礎の工夫などを検討します。
特に、重い建物の場合は、建築家から構造家と呼ばれる構造の専門家に構造設計を外注することになります。

この時点で適切な地盤処理がなされ、必要な強度の構造が設計されていれば、かなりの地震に耐えられるはずです。

さて、この構造家というのが今問題になっている部分です。
建築コストを削減するために、構造家を抱きこみ、構造の手抜きをするというのが強度偽装事件の核心です。

はたして個人住宅の場合でも、建築コスト削減のために構造家が強度をごまかすでしょうか?

設計業界は細かく専門分野が分かれており、同じ構造家でも住宅専門の構造家がそれにあたります。
それも免許を持っていれば誰でもいいというわけではなく、建て主の皆様が建築家を選ぶのと同様、建築家が同業者などの評判を元に常に構造家を吟味しており、皆様の目には触れませんが有名な住宅構造家という方もいらっしゃいます。

結論から申し上げますと、私達はこのような住宅の構造家が意図的に強度をごまかすことはないと思っています。
なぜなら、建物そのものが厳しい競争原理にさらされる商業ビルやホテルとは異なり、個人住宅の場合はその動機がないからです。

通常、商業ビルやホテルは、まずその地域の市況などを元に経営計画・収支計画を作り、そこから逆算して建築コストが決められます。
つまり、「こういう建物を作るにはいくらかかる」というのではなく、「こういう建物をいくらで作らなければならない」ということに設計者や施工者が常に、そして厳しく縛られるわけです。
それは至上命題といってもいいでしょう。

一方、個人住宅も安く済むに越したことはありませんが、あくまでも建て主のご要望を元に設計を積み上げた結果として建築家コストがある、というのが個人住宅の世界です。
もし、建て主が「こういう住宅を○○万円で必ず作って欲しい」とおっしゃられても、それが見合うものでなければ構造家以前に建築家が設計を引き受けません。

つまり、住宅の場合は構造家が強度を偽装するほどのプレッシャーもなければ、現実的にそういう文化もないのです。

むしろ、建て主の要望を取り入れながら一定の強度を適正な価格で実現するという、構造家個人としての技量の方が影響を与えるものと考えます。

いい建築家は腕のいい構造家と強い信頼関係をもって仕事をされています。

その意味でも、「自分にあったいい建築家を選ぶ」ということが、建て主としての最大の護身術と言えるでしょう。

2007/1/30(関)