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メリットとデメリット

建築家に設計を依頼する場合でも施工は工務店が行いますので、建築家の家の特徴にはそれぞれの工務店の特性が加味されます。

例えば、建築家の仕事をやりなれている工務店と、そうでない工務店では見積り調整の期間や工期において差が出ます。

ここでは、不確定な建築家と工務店の相性をなるべく考慮せずに、一般的なお話をしたいと思います。

(1)コスト

建築家の家の一番のデメリットはコストが高いことです。

ハウスメーカーは基本仕様が決まっており、工務店も自社施工なのであまり厳密な設計図面は必要ありませんが、建築家は一棟一棟ゼロから細部までを設計しなくてはならない上に、工務店に渡す詳細な図面も必要ですので、数倍の量の図面を描かなければなりません。

また、建築家の家のメリットのひとつは、監理を施工者ではなく建築家が行うことですので、そのための費用もかかります。

結果として、工務店やハウスメーカーでは数十万円ほどの設計監理料が、建築家の場合には数百万円の単位になります。

工事費に関しても、一棟一棟に合わせた特注品やデザインに気を使った材料などを使いますし、工務店にとって初めての材料や作り方が多く、また工事精度も厳しく要求されますので手間が余計にかかり、その分、工務店の設計施工と比較すると高いものになります。

また、以上のことによって計画期間も長くかかりますので、仮住まい費用などの諸経費もかさむことになります。

よって、同じ土地に同じ床面積の家を建てるとすると、理論的には工務店の設計施工よりも必ず高くなりますが、ハウスメーカーの場合は土地の条件によってコストが急上昇することがありますので、特に都市部の狭小住宅などでは建築家の家の方が安い場合もあります。

土地も購入する場合は、建築家の設計は地形に対する柔軟性が最も高いため、安い土地でも欠点を問題としない場合が少なくなく、土地を選択できる前提で総額を比較すると、三者の差は縮まります。

なお、工務店やハウスメーカーははじめの契約の時点で価格がほぼ確定するのに対し、建築家の場合は、本当の工事費がわかるのは設計のあとの見積り時点ということになり、依頼先を決める時点で正確な工事費が分からないということも建築家の家のデメリットです。

(2)設計の自由度とデザイン

法令・予算以外の制約は一切なく、完全な自由設計が可能で、いかなる工法仕様も選択することができます。

制約が一切ないということは、よりオシャレな家を建てられるということではありません。そこまでは工務店やハウスメーカーでも可能なことです。

制約がないことの本質的な意味は、それぞれの家族のライフスタイルや土地の環境に合わせた設計を全くのゼロベースから行うことができ、施工の都合よりも生活や地域との調和を最優先に考えた設計が出来るということです。

また、土地の欠点をカバーする手法にも制約が加わらないため、条件の悪い土地でも影響が出にくく、特に超狭小住宅や地形が極端に悪い土地などでは、コストの面においても建築家以外の選択肢はありません。

これらのことは、設計の自由度だけではなく、建築家の設計思想も関係しています。

施工も請け負う工務店やハウスメーカーが、住宅をそれだけで完結するハードウェアと捉えがちなことに対して、建築家は住宅をまず家族の個性や住環境ありきの、生活というソフトウェアを構成する一部だと考えています。

よって、建て主の理想的な生活を実現するためにどのような形を作ればいいかというのが設計上の最優先課題であり、そのための設計力も備えています。

ただし、多くの場合、細部の仕上げ方などの施工技術上の知識は、工務店の方が勝っており、上手な建築家は施工を担当する工務店の知恵をうまく引き出して家を建てますが、工務店をうまく扱えない建築家が設計・監理を行った場合は、詳細な性能において工務店の設計・施工の家に劣る場合があります。

デザインに関しては、好き嫌いはあるにしても、デザインに気を配らない建築家はまずいません。建築家は正確には意匠建築家であり、デザインを重視することが前提になっています。

このように、工務店やハウスメーカーと比較して、設計やデザインの自由度は建築家が最も優位であり、建築家の家の重要なメリットだといえます。

コストと自由度はトレードオフの関係にありますので、ハウスメーカーが自由度と引き換えにコストを優先しているのに対し、建築家の場合はコストと引き換えに自由度を優先する依頼先ということができます。

(3)品質

ここでは、「欠陥住宅になりにくい」「手抜き工事を防ぎやすい」という視点で品質を考えて見ます。

欠陥住宅を防ぐためには、「監理」という役割が重要になってきますが、建築家で建てる家の場合、建築家が建て主に代わって監理を行いますので、チェックされる側とチェックする側とをはっきりと分けることができます。

また、建築家が監理に手心を加える理由もありません。

つまり、建築家の家は監理に正常なチェック機能が働き、手抜き工事になりにくいことが大きなメリットといえます。

ただし、ハウスメーカーが繰り返し同じ家を作りながら不具合を改善できるのに対し、建築家の家は一つ一つが異なる仕様であるため、建ててみないと不具合が生じるかどうか分からないという特性があります。

しかし、それは手抜き工事による欠陥住宅とは意味が異なり、竣工後にいくらかの改修を経て最終的に完全な家に仕上げることが、完全注文住宅の元々の特性であり前提といえます。

(4)保証

品確法は、竣工後10年間の瑕疵保証を施工者に義務付けていますので、建築家に設計を依頼した場合でも、施工した工務店が保証元になります。

(5)ローンの組みやすさ

工務店やハウスメーカーが金融機関と昔から協働関係にあるのに対し、建築家で建てる家はまだまだ認知度が低く、金融機関に対して十分な説明が必要です。

また、建築家が融資の段取りをつけてくれることはありませんので、建て主自身が交渉し、事務をこなさなければなりません。

さらに、ほとんどの金融機関や住宅金融公庫の住宅ローンは、工務店やハウスメーカーの建て方に合わせたシステムになっており、建築家に依頼する場合は、申し込みや融資実行のタイミングを計ることが必要です。

また、土地を同時購入する際などは、土地購入から工事契約までの期間が長いことを理由に審査以前に断られることがありますが、その原因は金融機関の窓口担当者の認識不足であり、建て主個人の信用に問題がなければ、どの金融機関でも融資の方法は見つかります。

最終的に建築家に依頼することが原因でローンが組めないということは稀ですが、工務店やハウスメーカーで建てることに比べ、ローンを組むのに以上のような不便さが伴います。

Point
・設計やデザインの自由度が高い代わりに、コストが高い。
・施工者以外が工事を監理を行うことによって、手抜き工事を未然に防ぐ。
・住宅ローンを組むことに不便が伴う。
2005/11/9(関)